第八話:0.5mmもいかないくらいの仮歯の修正

前回仮歯を入れてから2週間、私は歯をよーーーく観察していた。

せっかくの高い買い物なので、出来るだけいいデザインにしたいし。

鏡の前で、ニィーと歯を出して、正面から、横から、いろいろな角度から写真を撮って…、と気持ち悪いくらいに歯を見まくった。

すると、いろんな所に気づいちゃう。
これまで気づいていなかった問題にもね。
奥歯の噛み合わせだとか、犬歯の出っ張り具合、尖り具合なんかが。

仮歯にした前歯2本に関しては、たぶんこれがギリギリ下げられる角度で、長さも長いんだけど横のラインを見ると揃っているし、これ以上短くしたらおかしいんだろうな。

すごく完璧、というわけではないけれど、正直自分でもよく分からなくなってくるというか、これがベターなのだと感じる。

しいていれば、前歯の張り具合かな〜
これをなんと表現したらいいのか….

でも、おおむね気に入っているのかもしれない。

と思いながら、4日目の治療に向かう。

ほんの少しの違和感

先生:「痛みはありませんでしたか?仮歯の感じはどうですか?」

私:「痛みは全くないです。ただ気になるところが少しあって。今の仮歯は前の歯よりもずっといいと思ってます。ただ、上唇をもっと下げたいというか歯と上唇がくっついているような違和感があって…

先生:「うーん、けっこういいと思うんですけどね。それは慣れとかもあるかもしないし、あと、少しだけ歯の表面が、いま丸い感じなので、少しだけシャープな感じにするとその違和感がなくなるかもしれません。これは仮歯なので何度でも直せますので、今日やってみて使い勝手の様子を見てもいいかもしれませんね。」

たしかに、歯の表面の丸みは気になっていた。
言われて、あぁそういえば〜という感じなんだけど。

私:「あとは、歯単体でみるとやっぱり長いと思うんですよね。ただ、横の並びで見るとこれ以上短くできないのは分かります

先生:「そうですね…、確かに幅と長さのバランスでいうと長いんですよね。でもそれは歯周病で歯茎が下がってるので、歯のはじまりが奥にいってるので、長くなっちゃうんですよね。あまりに短くすると真ん中が空いちゃうことになるので…。あと、2番の神経を残してるんで、これ以上短くすると2番も神経残せないですね。
でもあとほんの0.5mmもいかないくらい…短くできるかもしれないです。これも今日試してみましょう。あとで技工士さんにも見てもらうので。
今日は、根の治療を終わらせて、仮歯の調整までやっちゃいましょう」

ここは医院内にラボ(実際に歯を作る所)があるのがいい。
ごく普通のビルで、果たしてどんな間取りになっているのか、まるで分からない。

以前から思っていたことだけれど、たいていの歯科ってすべて個室(半個室のような感じ)だし、歯科の間取りってすごーく工夫されてるんだろうな
治療の途中でトイレに行くと、どこに戻ればいいのか分からなくなったり…(方向音痴だから?)
ちなみに今日の部屋も、思いがけない所からドアが開いてトイレに繋がっていた。

そう、どこに技工士さんがいるのか分からないけど、すぐに見てもらえて調整できるのはいい。

で、治療開始。
前回麻酔をした歯茎がすごく腫れたので、その話をすると、「今日は前回ほどたくさん削ったりしないので、少し控えめに麻酔をしましょう」とのこと。

麻酔をして、神経を撮った歯の根に薬を入れる。
なにをされているのかは分からないんだけど(見えない)、ピピっと鳴る機械で何かをしている。
(歯根の距離を計っているらしい)

レントゲンに映る私の罪

薬を入れ終わり、レントゲンを撮る。
いつも撮っている、顔のまわりをぐるーっと1周するようなレントゲンではなく、部分的なレントゲン。

このレントゲンの器具が私の口に入らない。

だってアーチが狭いから…
そのせいで、いろいろと苦労しているんだ…!

どうにかして(押さえてて?)レントゲンを撮る。

映し出されたのは、前歯2本の根っこに薬が入っているもの。

薬の部分が白くなっている。
なるほど〜。
なるほどね〜。

私には初めて見るレントゲンだった。

これまで私は、何度も歯のレントゲンを撮る機会があった。
そして私は、歯周病はあったものの、虫歯にはなったことがないので、治療後が一切ない綺麗な?レントゲンだった。

でも、今後、私の歯のレントゲンは、真っ白の「治療跡」がレントゲンにしっかりと映る。
あたりまえなんだけど。

こうなると、過去の、一切歯を削っていなかった頃の、一切治療の跡がなかった頃のレントゲンすら愛おしい。

今後、綺麗なセラミックの歯が入ったとして、見た目では全く差し歯とは分からないすごーーーく綺麗な仕上がりになったとして、それでも、レントゲンを見れば、一目瞭然で私がやったことが映る。
当然のことだ。

 

レントゲンで薬がちゃんと入ってるのが確認できたので、土台をたてる。

私:「先生、その白い土台、後で見れますか?」

私は、ファイバーコアが見てみたかった。
被せものをしてしまったらもう見えない、ファイバーコア。
そして、重要な役割をしている土台。

先生:「あとで見れますよ」

ガリガリ、ギュイーンと工事の音。
何をしてるか分からないから不安を感じる。
いっそ、見てみたい。

たぶんだけど、土台の太さや長さを歯科衛生士さんがメモしている。

 

治療中の風?が当たる度に、神経を残した2番が痛む。

(い、痛い…)

先生:「はい、これで前歯2本の根の治療は終わりです」

鏡で歯の裏側にある「ファイバーコア」を見せてもらう。

先生:「この白いのがファイバーコアです」

第七話の写真に載ってる左右1番がファイバーコア。

 

神経の炎症が痛い

私:「先生、いま2番が痛いんですけど…」

先生:「今はこのピンクの部分の神経が炎症を起こしている状態で、じきに収まると思うんですけど…。ここは神経を残せるかどうか微妙などころなんです。」

けっこう痛かったので、この先やっぱり神経を取ることになるなら今取ってもいいかとも思ったけれど、いまの痛みが「炎症」でじきに収まるなら、やっぱり少し様子を見ようか、という気持ちになった。
やっぱり、残せるなら残したい。

再度型取りをする。
型取りの薬は、相変わらず辛くて苦い。

職人のような「調整」

そして、前回作った仮歯の調整をするため、技工士さんを呼んでくれる。

わたしは治療のはじめに伝えた仮歯の違和感を、先生と技工士さんが何やら話している。
やっぱりこの2人の会話はよく分からないんだけど、なぜだかこの時間に安心感を感じる。

すごく細かく、職人のように、あれこれ「できるかできないか」を話している。

「ちょっと印つけておこうか」と言って、印をつけてるみたい。

後で、そっと横のトレーを見たら、マッキーペンが置いてあった。

マッキーペンで印をつけるのか〜
なんだか工作みたい。

歯を作るのは、工作に似ているのかもしれない。
もちろん、精度は全く違うけど、「手づくり」の歯だ。

手を動かして、精密な作業で、調整をしていく仕事は、やっぱり神業としか思えない。

最初の仮歯は、表面に少し張りのある、丸みのあるデザイン。
これを丸みを押さえた、少しシャープなデザインにする。
高さも、ほんの気持ち程度短くする。

仮歯ができあがり、再度先生と技工士さんが話している。
「あと、もう気持ちここを…」
「あとちょっとイケますね」
みたいな話をしていて、何のことだろうな〜と思いながらも、「出来る限りのことをしている感」がある。

いい感じの二代目仮歯

で、5分くらい待って、仮歯をつけた姿を鏡で見せてもらう。

先生:「うん、さっきよりずっといい」

麻酔が効いているので、感覚は分からないものの、なんとなくのパッ見は前よりいい!

これはほんとに「微妙な差」なんだけど、この微妙な差で、すごく見た目が違う。

先生:「これでしばらく使ってみて、また次回聞かせてください。次回は下の歯の治療を進めるということでよろしいですか?」

私:「はい、お願いします。」

ついに下顎の治療を決断する…

先生:「次回は6本になりますし、生え方もかなりバラバラなのでちょっとやってみてどうなるか…ですね。何があるか分からないんで、少し長めに時間を取らせてもらいますね。」

(何があるか分からないという言い方が怖い…!何本根幹治療をするかということだと思うけれど…)

私:「あの、やっぱり下の歯は神経を残すことはできないんですよね」

一応、再度聞いてしまう。

先生:「下の歯はかなり高さがバラバラで…、この高さを短くしただけでもうピンク色のスポットが出てきてしまう可能性があります。やってみないと分からないんですけど…」

私:「この1本飛び出てる歯の抜歯は絶対なんですかね。削ってみて、やっぱりイケそう、なんてことはないんでしょうか」

先生:「これはもう、明らかに生えてきているポジションが違うので、抜くしかないです。」

(そうですよね〜。これは素人が見ても分かるレベルなので…)

↓この1本飛び出てるのが問題の抜歯する歯。

やっぱり神経の形状が知りたい

私:「ところで先生。前回取り出した神経ってピンクなんですか?どんな形状なんでしょうか?」

先生:「血とピンク色が混じったゼリーみたいな感じでしょうか…」

固体でも液体でもないゼリー。

わたしの前歯2本には、そのゼリーはもうない。

次回の予約は1週間後。

【セラミック矯正のその日の治療費】

ファイバーコア  20000×2本 43200円
診察費 1620円
合計 44,820円

【セラミック矯正のその日のやったこと】

・前回根幹治療した2本に薬を詰めてファイバーコアをたてる
・薬がきちんと入っているかどうかをレントゲンで確認する
・ 仮歯の修正 丸み(張り具合)を少なくして、スクエアな感じに調整してもらう

【セラミック矯正の次回の治療でやること】

・犬歯から犬歯までの6本
・1本は抜歯。残りは削る

一代目仮歯

二代目仮歯

これがこうして写真を並べて見るとあんまり違いがよく分からないな…

でも、自分で実際に見ると全然違うし、数日使ってみて、「使用感」(唇へのあたり具合とか)も変わり、俄然、二代目仮歯の方がいい。
わかるかな〜、一代目はちょっと丸みのあるデザインで、二代目はシャープな感じ。
これは好みもあるけど、私はこの二代目のシャープな歯が好き。
(こうして写真で見ると一代目の方が自然にも見えたり、けっこういい感じにも見えるんだけど…、でも実際は二代目の方が自然だし、口の中の違和感もないし、私はにはこっちがいい)

 

 

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