第十九話:まさかの初めての虫歯治療

この日は歯周病の再生療法準備のはずだったのが…、唐突にまさかの展開となった。

まさかの、「はじめての虫歯治療」だった。

わたしはこれまで39年間、虫歯ができたことがなかった。

はじめての虫歯

この日、奥歯の状態を見てもらう際に、わたしは念のために、ある「違和感」を伝えた。

私:「あの、じつはちょっとよく見えもらいたい箇所があって、左下の5番と6番の間と、7番の8番の間をよく見てもらますか?以前に確か初診の次くらいにも先生に見てもらったんですけど、もう一度ちょっと見ていただきたいと思って。じつは、わずかなんですが、毎日歯間ブラシをする中で、ちょっとした違和感があるんです、痛みとかではないんですけど。」

私は、毎日の歯磨きで歯や歯茎の反応を確かめる習慣があるので、この違和感には数年前から気づいていた。
痛いわけでもなく、しみるわけでもなく、なんとも言えないんだけれど「違和感」。

自分では、歯茎の状態が悪いのか、もしくは何か挟まっていたものが取れた、とか、そういう違和感なのかな?と思っていた。

これまで、ずっと歯医者さんに通っていたけれど、一度も虫歯は指摘されたことはなかったし、歯磨きも褒められていたし、パノラマレントゲンでも特に問題のある箇所はなかった。(虫歯では)

先生:「全体的に見てみますね。うーん、特に見たところ虫歯はないです。違和感はしみるとかですか?」

レントゲンも見直した。
歯周病の骨の状態を見るために取った部分的なレントゲンも取ってあったので、その状態を見ても、とくに問題はない。

先生:「これはどちらかというと骨を見ようと思って撮ったものなので、もう一度、気になる部分のレントゲンを撮ってみましょうか。外から見ても何でもなくても、中で虫歯ができていると嫌なので。」

私は、気になる部位のレントゲンを再度撮った。
私の口には器具が入らないので、いつもと同様に先生が押さえながら撮影した。

そのレントゲンを見たところ…

先生:「あ、5番は虫歯です。うん、これは虫歯ですね。この黒い影の部分。これはパノラマでは歯の重なりがあって見えないところなんですけど。確かに虫歯があります。
あと、8番にも小さくですが虫歯っぽいものがあります。この8番は治療しなくてもいいかな、と思います。」

私:「え!?先生、わたし、はじめて虫歯になるんですけど。それにこれまでに虫歯を指摘されたことはないんです。

先生:「はい、歯周病の菌と虫歯の菌は違うので、歯周病になりやすい方は虫歯になりにくいというのは多いんですけど。でもこれは虫歯です。これだと、パノラマで見ても、定期検診していても、分からない箇所にあります。ですが、これは中で大きくなってる可能性もあるので、この5番は治療した方がいいですね。今日、先にこちらを治療しましょうか?

私:「はい。」

私は、初めての虫歯に、動揺していた。
でも、気づけてよかった。
私の「違和感」は正しかったのだろうか。

先生:「このレントゲン見たら、あ、思ったより大きいな、と思いました。たぶん神経までは達していないので、できるだけ削らないようにして、ちょっとずつ削ってみます。」

私は、唐突に始まった虫歯治療に呆然としていた。

先生:「虫歯の治療は6万円になります。神経まで行っていなければ、今日のうちに仮歯まで入れられます。」

虫歯の治療のことは、これまでに「考えたこともなかった」ことなので、6万円が高いのかどうかも分からなかった。

(あぁ、念のため今日はお金をたくさんもってきていてよかった…)

私の小臼歯をギュイィーンと削っていく。

途中で、イヤな予感がした。

先生:「これは…、思ったより大きいです…。ちょっと見せますね。

私は、鏡で確認した。
歯の端が削られている。

その歯の中から、器具でガリガリと「虫歯らしきもの」をかき出してくれた。

先生:「こんな風に、思ったよりも中で大きくなっています。」

そこには、絵に描いたような「虫歯」が見えた。

外からは全く分からなかったのに…。

私:「この、今取り出している黒いのが『虫歯』なんですか?この白いポロポロしたものが歯なんですか?

私の「歯」は、ポロポロした白いチーズのようだった。
黒いカビが入り交じっているような…。

私は、虫歯が出来てた事実にショックを受けると同時に、この絵に描いたような虫歯に興奮していた…。

(これが『虫歯』なんだ…)

先生:「はい、白いのが歯です。象牙質です。
あとは機械で削っていきますね。思ったより大きいので神経に近づく可能性があるんですけど、これは取りきらなきゃならないんです。うーん、うっすらピンクが見えているんですけど…慎重にいきます。もしかしたら後で痛みが出るかもしれないです。」

私は、このうっすらピンクなのが見え、ショックと興奮の中、最悪の事態も想定していた。

その後、機械で削って行く。

先生:「ちょっと、これは説明しないと…。」

と、再度、鏡を手渡された。

そこには、ピンクどころか、真っ赤なゼリーのような神経が見えていた。

(これが、神経…)

私はこれまでに見せてもらった途中経過の中でも、一番よく見えていたので、興奮がとまらなかった。

(赤い…、綺麗…)

真っ赤なゼリーが細かい線になっていて…、それが周囲の白と混ざり合って、マーブル模様のような、赤い宇宙のように見えた。

うっとりとすると同時に、『状況が最悪』であることは、もう理解していた。

先生:「ここまで削らないと虫歯が取りきれない状態でした。ここまで神経が見えていると確実に痛みが出ます。だから、今日神経を取ります。これは仕方がないです。これは大分前から中で虫歯ができていて、いつの間にか大きくなっていたのかもしれません。外からは見えないので気づきようがないのですが…」

私:「はい。」

このとき私は、罪悪感を全く感じていなかった。

前回までの話の中で、あれだけ「歯を削る罪悪感」について悩んでいたというのに、虫歯となれば話は別だ。

虫歯を治療しなければならない。

健康な歯を削るのと、虫歯の歯を削るのでは大違いなんだ。

そして、ついに、「ラバーダム」が装着された。

(これがラバーダム…。)

前歯の治療ではラバーダムを使わなかったので、私は人生で初めてラバーダムを使った。その感動?に浸っていた。
私はどうして今こんなドキドキ興奮しているのだろう…

先生:「今日は申し訳ないんですが、仮歯までいけないです。やることが増えちゃったので。今日でほとんど根充が終わるところまで行きます。そして次回ファイバーコアを立てて仮歯を入れます。次回は時間を開けずに来ていただけますか?間があくと感染のリスクが高まるので。」

その日は、仮の蓋をした状態で終了した。

歯は3分の1ほど削られた形のままだった。
私は運良く3日後に治療の時間を確保できた。

このあと詰め物になるのか被せものになるのか…ともかくまたお金がかかるのだった…。

口を開けるときの顎の痛み

今日は、これまでの治療の中でも、「顎の痛み」がすごく大きかった。
前歯の治療のときもだった。
口が小さいので口を開け続けているのが、すごく辛い。
今日は、小臼歯というのもあって、これまでの中で一番顎が痛かった、
口を開けていたのは30分ほどだったけれど、もう限界だった。

私:「先生、私、口を開けるのがすごく辛くて、もう顎が限界なんです。こんな状態で再生治療が出来るのかどうか…

先生:「そうですね…、再生治療は1部位で2時間くらいのオペになるんですけど、静脈麻酔を使いましょうか。」

私:「静脈麻酔を使うと顎が痛くないんですか?」

先生:「寝ている間に治療が終わっているので、治療中に痛いな〜と思いながら治療するよりはラクだと思います。終わったあと、少し顎が疲れたような感じがするかもしれませんが、あっという間に終わりますよ。」

私:「じゃぁ….します…」

と答えたものの、私は、本当は静脈麻酔なんてしたくなかった。
寝ている間に治療が終わるなんて、そんなの本当は嫌!
何をしているのか、見えなくても、「感じたい」。
その時間を味わいたい。
こんな機会めったにないのに、寝ている間に治療が終わっちゃうんなんて、もったいなすぎる。

でも、私は顎の痛みはもう我慢ができなかった。
仕方がないのかもしれない。

治療後も、顎の痛みはしばらく続いた。

削られた小臼歯

私の削られた小臼歯。

こんな状態を見れるなんてな〜
根の治療までいってしまい、予定外の出費、77620円。

でも私はなんだかとってもふっきれた清々しい気持ちもあった。

この虫歯がいつから出来たものか分からない。
あの「小さな違和感」があったのはもう数年前になる。
目に見えないし、痛くもない。

私は、虫歯の痛みを知らずに、初めての虫歯治療をした。

【セラミック矯正のその日の治療費】

診察料 1620円
根管治療 75600円
合計 77220円

【セラミック矯正のその日のやったこと】

・虫歯の治療
・根管治療

【セラミック矯正の次回の治療でやること】

根管治療の続き

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コメント

  1. 匿名 より:

    私も長年、歯周病で悩んでます。悩みすぎて鬱っぽいくらい(TT)
    前向きなルンルンさんを知って、少し勇気が出ました。
    歯科治療、頑張ろうと思います。

    1. ルンルン より:

      ちょっとでも勇気をもってもらえたらとっても嬉しいです。
      歯周病の痛み、苦しみ…よくわかります。私も3年前に歯周内科の治療を受けるまでは、10年位の間とってもつらい日々でした。
      この3年は痛みもなく、そして今ついに、失った骨を再生すべく歯周外科の道へ進みます…!
      骨がどのくらい復活するのかは分かりませんが、どうぞお楽しみに…☆

  2. より:

    名前とか残すのを忘れててごめんなさい。
    魚と申します。
    返信ありがとうございます。
    歯周外科、良い選択をされましたね。
    実は先月、私も増骨手術を受けたところです。
    お互い、増えると良いですね♪

    1. ルンルン より:

      魚さん
      コメントありがとうございます ^ ^
      魚さんは既に再生療法されたんですね!
      私も今月中に1回目の手術をします。
      3部位を2〜3回に分けて行う予定です。
      痛みなどは心配ではありますが、骨が復活するのが楽しみです!
      (とはいえ、数年単位での経過ですが…)

      お互い、骨のポテンシャルを信じましょう♪
      よかったらまたご様子教えてくださいね。

      1. より:

        こちらこそ、ありがとうございます。
        悩みが話せて嬉しいです。
        ルンルンさんと私の骨の減り方は似てまして。
        今月の手術、ドキドキしますね!応援してます。
        もし宜しければ、メール下さい (*^^*)
        私の状況で良ければお伝えしますよ♪

        1. ルンルン より:

          魚さん
          ありがとうございます☆
          見えないところの悩み…こちらこそ共有できて嬉しいです。
          骨の減り方…似ているんですね!
          とっても心強いです〜

          チャレンジケース(効果があるか微妙)と言われているので、どうなるか不安でもありつつワクワクしています。

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