第一話:そもそもなぜ「セラミック矯正」を考えたのか

私はずっと歯のことで困っていた。

小学生の頃か歯茎がずっと痛かった。
しょっちゅう歯茎から血が出ていた。
風邪を引いたり寝不足になると、歯茎がよく腫れた。
ときに歯茎に膿みがたまり、歯医者さんで歯茎を切開して膿みを出してもらっていた。
もちろん歯医者さんへは定期的に通っていた。
歯並びがすごく悪く、ちょっとでも放っておくと歯石がたまってしまうからだ。
ブラッシングの指導は何度も受け、歯磨きは上手にできるようになり、歯磨きは褒められていた。

それでも、歯茎の痛みは、とまらなかった。
20歳の頃から歯周病と診断され、あと10年以内に抜けます、と言われ続けた。

そしてついに、30代に入り、歯がグラグラしてきた。

前歯はグラグラ、奥歯は歯が浮いた感じで痛い。
食べ物を食べられない。

そんなもうギリギリの35歳のとき、はたして、これまで、歯科で原因と言われ続けていた「プラーク」以外に歯周病の原因はないんだろうか?
なにか根本的な治療法はないのだろうか?
と調べてたどり着いたのが、

・歯周病は「感染症」である

ということ。

つまり、菌をなくさなければ根本的改善ができない、ということ。
もちろん、そうでない原因の歯周病もあるので、まずは顕微検査で歯周病の菌であるスピロヘータがあるかどうかを確認し、もしあればその菌を抗生物質でなくす、という治療法があるらしい、と知った。

この「歯周内科」治療は、保険適用外なので、自由診療の歯科で行う。
歯周病に力を入れている歯科を選び、私は、ここで歯周内科の治療を行った。

これが、あまりにも革命的で、薬を飲んで3〜4日目には、ある日目が覚めたら突然「口内環境」がかわっていた。
「歯茎が痛くない」という思いをしたことがないので、まったく歯茎の感じが違うのに本当に驚いた。

この治療は、賛否両論あるものの、私はやってよかったと、今でも思っている。

抗生物質のジスロマックを飲み、この効果があるうちに、カビ取り剤で歯磨きし、口内を無菌にするうがい薬を使い、全歯自費のSRPをした。
自費のSRPは歯ごとに価格が決められていて、難しい奥歯が高くて、前歯は安い、という感じ。
私は全歯歯周ポケットが4mm以上だったので、全歯SRPとなった。
これが結構高くて、たぶん全部で20万くらいかかった。

でも、この歯周病治療で、私は「歯茎が痛くない人生」を知った。

このSRPの期間(6回くらいに分けて行った)、歯茎はグッと退縮し、歯の根が見えるようになった。

でも、歯茎が引き締まることで、これまでぐらぐらだった歯がしっかりとしてきて、前歯でも奥歯でもモノが噛めるようになった。

それからは、歯磨きや定期的なクリーニングをして、歯周病をいまより悪くさせないよう、日々過ごして来た。

あれから3年ほど経ち、「歯周病」という大きな悩みから解放され、私は「もっとよくなりたい」という願望が生まれた。

(このガチャガチャの歯並びを整えたい)

それは、子どもの頃からずっと思っていたものの、まずは歯周病をどうにかしなければという思いで、歯並びをどうにかしようなんて、私には贅沢な悩みだと思っていた。

そこで私は、38歳になってはじめて、「歯科矯正」に興味をもった。
ちょうどその頃、娘が7歳で、娘も私と同じく歯並びが悪く、矯正を始めた。

ここで、矯正については一通り何人かの先生と話をし、有用性について学んだ。
(娘の矯正については別に書こう。とりあえず今は私の話を。)

最近は、大人になってからの矯正も多く、40代、50代、60代からはじめる人もいる。
生涯を自分の歯で過ごすためには、けっして遅いということはない。

何歳になっても、矯正する価値はある。
何歳になっても、矯正することができる。
ただし、歯茎が健康であれば…

わたしは歯周内科治療を始める35歳のその時点で骨がだいぶん溶け、3分の1ほどになっていた。

この歯茎の状態で歯を動かして大丈夫なのだろうかという心配と、歯の根がもう見えている歯を綺麗に並べて審美的にどうなのか、と思い、矯正以外の方法も模索した。

この間、矯正歯科でも相談をし、「できないことはないけれど、最中に抜けてしまうことがあるかもしれない」と聞いていた。

そこで知ったのが、「セラミック矯正」。

自分の歯の多くを削って、その上にセラミックの補綴物(ほてつぶつ)をかぶせるという方法。

私は歯周病で悩み始めてから、歯チャンネルを眺めるのが趣味だったので、この治療法がいかに「不健康」なことか、よく知っていた。

『せっかく歯周病が収まって自分の歯でモノが食べれるようになったのに、健康(健康というわけでもないのかな)な歯を削るなんて!』

『歯周病でいつ歯が抜けるかヒヤヒヤしていたというのに、歯を削るなんて!』

と、わたしは思ったけれど、今にも抜けそうな歯の根が見えた前歯を見ると、このまま抜けるのを待つより、この10年を幸せに笑って過ごせればいいのではないか?と考えるようになった。

矯正も視野に入れながら、わたしは審美歯科めぐりをはじめた。

はじめての審美歯科。
見た目だけのために何かをするなんてはじめてだった。

何件かの審美歯科をめぐる中で、いろいろな歯科医の考え方があるのだと知った。
いろいろな医院があるし、治療法があるし、訴求方法がある。

調べれば調べるほどリスクの大きさを知りながら、わたし自身は、結果「セラミック矯正」を選んだ。
罪悪感はもちろんある。

言い訳のようだけれど、わたしは決して「安易」には選んでいないし、よくよく考えたし、覚悟をしたし、お金をかけた。

(ちなみに、「お金がかかる」で矯正を諦めるなら、わたしのように激しく歯並びが悪い場合、セラミック矯正の方がよっぽど高い。)

何件か審美歯科をめぐる中で、選んだ理由は、先生との相性。

これに尽きる。

なんとなくの感じでしかないのかもしれないけれど、わたしは気に入った先生と出会った。
歯科めぐりをしている中で、いろんな先生と接していたので、1度会ったときに、「この人に相談をしたい」と分かった。

ほかの歯科よりも割高感はあったけれど、私はこのタイミングでなければ、たぶん何もしなかった。
セラミック矯正も、ちゃんとした矯正も。
何もせずに、歯が抜けるのを待つだけだった。
「何もしない」という選択をしたと思う。(何かをする選択ができなかったと思う、)

でも、「やる」道を選んだ。
将来、問題がおきても、私はそのときベストな選択をしたと信じたくて、「わたしの歯をずっと見てください」と言いたくなるような人に相談がしたかった。

そんなわけで、わたしは39歳でセラミック矯正を決断した。
将来どうなるか分からない。

決してみんなにはおすすめしない。

私の選んだ道のりを、ここに印しておこう。
誰かの役に立つかもしれないし、誰かが思いとどまってくれるかもしれないから。

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