【閲覧注意!!】第九話:自分で選んだ選択は自分でしか責任を取れない、涙のセラミック矯正

この記事では、治療中の怖ーーーい写真、お見苦しい写真が出てきます。(第七話以上に怖い写真です…)

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この日私は、治療中に泣いてしまった。

セラミック矯正の治療を初めて、初診から数えて5回目で、上の仮歯の調整が終わり、上の歯は気に入ったデザインの仮歯になっていた。

これから大金をはたいてセラミックの歯を入れることに対して、前向きな気持ちにもなっていたし、きっと綺麗な歯が手に入るんだろうな、とワクワクする気分でいた。

もう既に上の歯4本は削ってしまったし、もう後戻りはできない、という気持ちでもあり…。

ともかく、そんな「前向き」な気持ちだったのが、この治療の最中にいっきに不安に陥り、私は涙が止まらなくなったのだった。
(治療を決める最初からよく泣いてはいたんだけど、歯科で治療中に泣いたのははじめて)

何があるか分からない、恐怖の治療

この日は、下顎6本を削る。
そのうち、生え方の悪い1本は抜歯。
残りの歯も、3本は神経を取らなきゃならないかもしれない。

下の歯も、上の歯と同様に、かなり歯の向きを変えるので、抜歯も神経を抜くことも、話をよく聞いて納得はしていた。

前回、「次回は上の歯よりも大掛かりになりますので…、長めに時間を取りましょう。何があるか分からないので…。」と言われていた。

「何があるか分からない」って、その言い方怖すぎるんですけど…!(涙)

神経を取るかどうかは、削って行く最中で、ピンクスポットが出てくるかどうか次第。
だから、すっごく運がよければ神経を取らずに済むかもしれないし、運が悪いと全部取ることになる。
神経を取る作業もそれなりに時間がかかるし、前回上の歯2本の神経の処置では、口を開けてるのがすごく辛かった(顎が痛い)ので、これがもし2本以上となると、相当に辛い。

神経の処置中は、うがいができず、口を開けっ放しにしなければならないのだった。

私は心の中で、神経が出ませんように…と願うしかなかった。

初めて歯を抜く、健康な歯を

先生:「まず最初に、抜歯をします」

初めての抜歯。

「歯を抜く」なんて怖すぎる。

私の抜く歯は、歯周病で大分歯の根が出ている状態で、骨に埋まっている量が少ないため、カンタンに抜けるらしい。
見た目的にも、素人でも「あ、この歯カンタンに抜けそう」って思える見た目だったし。

これが例えば、親知らずとか奥歯だと、抜くのも時間がかかるのかもしれない。

それでもやっぱり、歯を抜くのは怖い。

人の力で歯ってカンタンに抜けるものなのだろうか。
私は、映画とかである、「拷問シーン」を思い出していた。
ペンチとかで無理矢理歯を引っこ抜く。
あぁ、痛いだろうな〜

考えれば考えるほど怖いけれど、もちろん麻酔もしているし、「痛くない」に決まっている。
そう信じて、私は歯を抜くその瞬間を診察台の上で待っていた。

目にはタオルをかけているので何をしているかは分からないけれど、麻酔をして、歯の側面に、抜きやすいように歯茎と歯の間に、棒のようなものを入れているのだと思う。(たぶん。想像だけど。)
そして歯茎から歯が離れてきたタイミングで、いっきに抜く。

抜かれるその時は、あごがググっと引っ張られる感じ。
もちろん、麻酔をしているので、痛みは全くない。

(あぁ、抜いちゃった!)

感覚で、抜かれたのが分かった。

私の抜かれた歯

その後、うがいをしたら、血が出ていた。
隣のトレイに抜いた歯がコロリと置いてあった。

その瞬間、「え!?歯ってこんなに長いんですね!」とびっくりしてしまった。
歯の見えている部分の倍くらいの細長い形だった。

先生:「歯の長さは標準的ですね。ただ、歯茎に埋まっている部分が、普通は3分の2くらいは埋まってるんですけど、歯周病で根が出ているので、半分も埋まっていない状態でした。」

私:「抜いた歯、持って帰っていいですか?」

私は、その細長い歯を家でじっくり観察したかったし、なによりもったいなかったし、記念?だし、罪悪感でもあるし、私はこの歯をずっと持っていようと思っていた。

先生が、「後で差し上げて」と衛生士さんに伝える。

(私の歯。全長21mm)

削った歯の粉だって私は欲しい

私は、この抜いた歯はもちろん、これまでに削った歯、これから削る歯の「削った分」すらも、取っておきたい気持ちだった。
かなりの量を削り、粉塵のようなものなのか、水で流して吸い取ってしまうのか、分からないけれど、おそらく、削りかすをもらえることはないと思ったので、もちろん、「歯の削りカスもください」とは申し出なかったけれど。

本当は、ピンクのゼリー状の固体と液体の中間のような神経だって、持って帰りたいくらいだった。
これこそ吸い取ってしまうのだろうけど、もったいなくて仕方がなかった。

ピンクの神経も小瓶に入れて保管したい!

と、思うくらい。

まぁ、そんなことはできないと思うので言わなかった。

でもそのくらい「もったいない」という思いがずっとアタマの中で駆け巡っていた。

そして、次に下の歯6本を削る

これからもっともっと、「もったいないこと」をする。

上の歯で分かっていたので、削る音にももう慣れた。

6本分、歯を削るのは、もちろん前回より時間がかかった。
特に、犬歯は「うまくコントロールし神経を取りたくない」と思っていたので、慎重に進めていた。

たぶん1時間近くは歯をずっと削っていた気がする。

ところが!

歯を削って行く中で、運の悪い出来事がおきてしまった。

先生:「犬歯の神経も取らなきゃならないかもしれないな〜」

私は途中で鏡を見せてもらった。

(この写真の少し背が高い1本がギリギリ神経を残した歯。でも後に痛むかもしれない…)

1本は歯が抜けて穴が空いている。
残りの1番と2番は大分削られており、うっす〜らピンク色が見えている。

先生:「この1番と2番はもう神経まで行きそうなので、神経を取ります。この1番だけなんとか…なんとかギリギリ行けそうな気もするので、このまままずは残してみましょう。でも後々神経の処置をしなきゃならなくなるかもしれません。
で、この犬歯なんですが、今、ほーーーーんのちょっとだけ先にピンクが見えますか?たぶんもう少し削るとピンクスポットなんですが、いまの状態だと、まだ仮歯が入らないんです。もう少し削らないと…」

犬歯は、なんとなく、楽観的に考えていて、神経を残せる気がしていた。
でも、気がしていただけで、やってみないと分からないとは思っていたし、仕方のないことだった。

犬歯は、歯の中でも、モノを噛み切る重要な歯で、この歯の寿命を縮めることで、後々苦労することになるんだろうな、と思った。

それでも、あともう少し削らなきゃならないのは、ほーーーーんの少し歯の先っぽに見えるピンク色で、見た目で分かっていた。

想定できる範囲での一番最悪の結果

神経を残せるかどうかは、削ってみるまで分からない。
全て神経を残せないかもしれない。それは想定の範囲内ではあった。
そして結果、想定できる一番最悪のパターンだった。

下の前歯6本のうち、神経を残せるかもしれないのは1本。
でもこの歯も、やっぱりピンクが少しだけ見えそうで、結果、前歯6本全部神経を失うかもしれない。
どっちかというと、そうなるんだろうな、と思っていた。

私:「この今神経が出てる犬歯も含めた4本は、今日処置をするんですよね。前回上の歯で2本神経を取るときに、口を開け続けてたら顎がすごく痛くて、その倍の時間口を開けられるとは思えないんですけど…」

先生:「大丈夫ですよ、今回みたいに4本の場合は、途中で休憩しながら、うがいもできるようにしますから」

口を開ける器具をはめる。
この器具がわたしにはたぶん合わなくて、結果器具なしの方がラクだった。

神経を取るために穴を開ける。
痛い。
麻酔が切れてきて、歯がズキンと痛む。

麻酔を途中で足してもらう。

(また麻酔で歯茎が腫れるのかな〜)

診察台の上で、急に涙があふれてきた。

神経4本の処置はやっぱり時間がかかった。

途中でうがいをできて、口も閉じられ、「ちょっと休憩しましょう」と、途中で休みも入れてくれたおかげで、
顎の疲れはなんとか大丈夫だった。

とはいえ、既に治療を開始してから3時間が経ち、私は疲れていた。

わたしは今後、10本のセラミックの差し歯になる。
そのうち、既に神経を取った歯は上2本、下4本(+抜歯1本)。
でも後に神経まで行きそうな気がするのが上の残り1本、下の残り1本。
結局のところ、全ての歯の神経を失うだろう。

神経とは、「命」のようなもので、私は自ら健康な神経を取ってしまった。

一時の見た目がよくなっても、数年したら、土台の歯がダメになるかもしれない。
神経を取ると、歯の寿命は10〜15年と言われている。
運がよければもっと長持ちするのかもしれないけれど、私は今後一生歯にお金をかけつづけることになる。
新しい差し歯をつくるためなのか、ブリッジなのか、入れ歯なのか。

そんなことをアタマの中で考えながら、「罪悪感」でいっぱいだった。

それでも、今の私にとって、「ベストな選択」だと信じたい。

リスクを取る覚悟と、よっぽどの強い心を持っていなければ、セラミック治療は選んではいけない。
自分で選んだ選択は、自分でしか責任を取れない。
私は、これまでの人生の中の重要な決断において、考えることも情報収集も怠らなかった。
だから、どんな結果であれ、「後悔」したことがない。

でもいまこのとき。
「後悔」ではないけれど、はじめて感じる「罪悪感」が心の中を覆っていた。
それは真っ黒で深い深い穴のような場所にいる気持ちだった。

診察台の上で、シクシクと泣き出す私を見て、先生は、

先生:「え!?痛いですか?大丈夫ですか?」
と声をかけてきた。

私:「痛くないです。」

痛くはない。麻酔をガンガン打っているから。
でも涙は止まらなかった。

先生:「怖くなりましたか?」

私:「はい」

怖い、というのとも違うのかもしれないけれど。
「不安」
「罪悪感」

ともかく、治療を少し中断しながら、私はどうにか泣き止んだ。

驚きの仮歯…

そして、やっと根の治療が終わり、仮歯をセットする。

診察台の上で、仮歯を入れて、技工士さんが見てくれる。
私はもう泣き疲れていた。
治療開始から3時間半が経過。

ところが、この仮歯が、思ったようにハマらないようだった。
何度か調整しながらやっと入る。
その最中、先生と技工士さんが話しているのを診察台の上で聞きながら、どうも見た目がイマイチなのは、見なくても想像がついていた。

先生:「とりあえずセットできましたので、いったん見てください」
と鏡を手渡され、私はこの日ずっとアタマにあった「罪悪感」が吹き飛ぶくらいに驚いたのだった…!

泣いている場合ではない!

(仮歯のデザインがおかしい)(歯が長過ぎる)(犬歯が傾きすぎ)(そして、ブリッジのところに穴が空いている)

上の歯は、調整をして気に入った二代目仮歯になっていた。
それでも一発目から、けっこういいデザインの仮歯だった。
仮歯とは思えないような仕上がりで、「本物の歯みたい!さすが審美的な仮歯だな〜」と思っていたので、この下の歯の仮歯の違和感には、本当にびっくりしてしまった。

そして、抜歯した穴がぽっかりと空いていて、どう見ても食べ物が詰まる。

(これって、普通なんだろうか…。穴もデザインも…)

と驚きを隠せないでいると、

先生:「次回、修正します。犬歯も神経を取ったので、もっと下げられるし、調整します。あと、いまは上の仮歯と噛んでいません。それも次回上の仮歯の裏に厚みを持たせて噛めるようにします。」

と、「とりあえず今は我慢してください感(次回ちゃんと修正しますよ、という雰囲気)」をアピールされたので、私はとりあえずデザインはさておき、穴の心配だけを伝えた。

私:「この穴に食べ物が入ったりしないんでしょうか?」

先生:「入っても大丈夫です。人の身体はちゃんと出てくるようになっているので。ただしばらくはあまり強くうがいをしないでください。血の固まりでだんだんと穴が塞がっていくので、それが早くに取れしまうと治りが遅くなるので。」

「抜歯してブリッジ」というのがどういうことなのか、一応アタマでは理解していたものの、こんなに穴が大きく空いているとは思っていなかったので、私は心配だった。

この仮歯のデザインも心配ではあったけれど、先生の態度の中にも、「このデザインはおかしい…」と思ってるだろうな〜という雰囲気満載だったので、このままにはならないと、信じよう。

(恐怖の穴…)

 

歯の見た目を美しくするプロが、この仮歯のデザインで「普通」と思うなんてありえない。

ともかく、私は疲れていた。
私の顎が痛くなったことや泣いたことで、診療時間も大分オーバーしていたし、もう今日はこれで仕方ないと思った。

次の予約までに、冷静にこの仮歯を見直して、どこを直したらいいか真剣に考えなければならない。

これまでの治療の中で、一番時間もかかり、身体への負担もかかり、パンパない罪悪感を感じ、そして仮歯のデザインにショックを受ける、ダメージの大きい治療だった。

 

自分で選んだ選択は自分でしか責任を取れない。

私は、人生で初めて、「自分で選んだ道を後悔するかもしれない」と本気で思った。
これまで、私は、後悔したことなんてなかった。
今までに、失敗も痛い思いもしたけれど、全ては自分で選んだ道だし、よくよく考えて選んだ道だし、どんな結果も受け入れ前向きに生きる「ポジティブさ」のあるタイプだった。
だから、「後悔してます」と落ち込んでいる人を見ると、「バカみたい」と思っていた。
だって、自分で選んだことでしょ。って。
そんな風に落ち込む人の気持ちが、私は少し分かった。

これまで私は、何も分かっていなかった。
誰のことも、理解できていなかった。

 

【セラミック矯正のその日の治療費】

抜歯 16200円
根幹治療 50000円×4本 216000円
診察費 1620円
仮歯 6000円×6本 38800円

合計 272,620円

【セラミック矯正のその日のやったこと】

・下の歯を1本抜歯
・下の歯4本の根幹治療(神経を抜く)
・仮歯6本のセット

【セラミック矯正の次回の治療でやること】

・神経を抜いた歯に土台をたてる
・下の仮歯の調整
・上の仮歯との噛み合わせの調整

 

(ビフォー)

 

(アフター)

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