わたしはこれまでに20年近く、しょっちゅう「歯が抜ける」という夢を見ている。
これは、ほんとに歯周病で歯の状態が悪くてグラグラしているときもだし、歯ぐきが安定していて問題のないときでも、いつも見る。
夢占いなんかでは、歯の抜ける夢は不吉らしい。
けれど、わたしはそんなの飛び越えるくらいの頻度で歯が抜ける夢を見ている。
もう慣れてしまったくらい…
でもやっぱり、はっと目が覚めるそのときの、目覚めはいいものではない。
歯のことで悩んでいるからそんな夢を見る、というのもあるし、全く違う悩みやストレスがあって見ることもある。
ともかく、身体や精神の状態がよくないときに、この夢をよく見るのかもしれない。
この先、この夢を見なくなることはあるのだろうか、と思うけれど、まぁ夢なのでいいか。
本当に歯が抜けないように、出来ることをすればいいだけだ。
子どもの歯の生え変わり
娘が5〜7歳の間、乳歯から永久歯に生え変わり、何本もの歯が抜けた。
グラグラしてきて、その小さな歯がスポっと抜ける。
歯医者さんで抜いてもらったことはなく、自然と抜けるか、あまりにもグラグラしてあとほんの少しというときは、娘は自分で歯を抜いていた。
ティッシュで歯をつまんで、シュッと引き上げる。
すると、スポっと綺麗に歯が抜ける。
わたしは何度か、「ママ抜いて〜」と言われたけれど、怖くて出来なかった。
やっぱり、本人じゃないと分からない感覚とかがあるし、歯が抜ける恐怖におびえている私にとって、「歯を抜く」「グラグラした歯を見る」というのは、恐怖でしかなかった。
もちろん、子どもの成長は嬉しいし、見てあげたい。
でも、抜くのは嫌〜
と思って、「歯医者さんで抜いてもらおうよ」と言ったけれど、なんだかんだで娘は歯を抜くのがうまくなってしまい、自分でコントロールしていた。
感覚で、いまはグラグラするけどまだ抜けない、とか、来週くらいに抜ける、とか分かるらしい。
子どもの歯は小さくてかわいい。米粒みたい。
あるとき、一度だけ、娘は歯を飲んでしまったことがある。
ある朝娘が泣いていて目が覚めた。
「どうしたの?」と聞くと、「歯のんじゃった」という。
眠っている間に、歯が抜けてしまい、朝目覚めたときに、つばと一緒にゴクリと飲んでしまったらしい。
「歯って飲んでもいいの?死なない?」と心配するので、「飲み込めたなら、もう大丈夫だよ」と宥める。
小さな歯を飲んでしまうことはよくあることらしい。
「今日歯が抜けたよ!」と喜ぶ娘と見るたびに、わたしは成長を喜びながら、自分の歯が抜ける恐怖を心の裏側で感じる。
歯の抜ける夢を医学的な観点から見ると…
先日、ふと不眠のためにいつも眠剤をもらっている精神科の先生に、夢の話をしてみた。
この先生とは3年くらいの付き合いで、いつもサクっと診察が終わるので好き。
あれこれと悩みを相談することもないし、なんとなくドライな感じが気に入っていて、私との相性は良いと思う。
いつもの通り、「いつもと変わりないですね」だけで1分くらいで診察を終えようと思ったそのとき、私は、「そういえば…」という感じで、めずらしくこちらから話を切り出した。
私:「そういえば、私、歯が抜ける夢をよく見るんですけど、何か精神的なものとか不眠に関係ってあるんですかね?」
先生:「夢は、眠りの浅いときに見るんです。1時間半ごとに、深い眠りと浅い眠りが交互にやってきて、そのたまたま浅い眠りのときに見た夢を、なんとなく覚えている、という感じです。
睡眠の途中で目が覚めてしまったりしますか?」
私:「それはないです。いつもちゃんと7時間眠れて、ちょうど朝目覚めるときに、夢をうっすら覚えてるという感じです。
たまたま1時間半ごとのタイミングが、朝やってくる、ということですね。
歯が抜ける、って夢占いとかだと、よくない兆候…とかいいますよね。夢の内容って何か関係あります?」
先生:「うーん、フロイトとかそういうのではそこを深く研究したり…っていうのもあるんですけど、最近はあまりそういうことはやらないですね…。医学的に何か関係があるかというと…、ないと思います。」
私:「ですよね。」
先生:「何か心配事があるんですか?」
私:「いま歯の治療をしていて、そもそも私は歯が悪いので、なんとなくそういう夢を見る、ってだけだと思います。別に心配してるとか困ってるわけじゃないんですけど、なんとなく聞いてみました。」
先生:「途中で目覚めて眠れない、ってことがなければ、心配ないと思いますよ。」
やっぱり、夢占いは関係なかった。(医学的には)
でも、私はおそらく一生、「歯が抜ける夢」を見続けるのだと思う。
もしくは、本当に歯が寿命を終えて抜けたそのとき、私は悪夢から解放されるのかもしれない。