第五話:セラミック矯正で200万を超える見積もりがやってくる

審美歯科めぐり2件目で行った、審美歯科の診察日がやってきた。

ここでは、初診では検査だけで、具体的な治療プランや見積もりは一切分からない。

ドキドキしつつつ、再びこの歯科を訪れる。

診察室で待っていると、前回型取りをして作ってくれた模型を持って先生が現れた。

先生:「こんな感じで上の前歯4本。少なくともこのレベルには綺麗にできますよ。」

へー、初めてみる自分の歯の模型。

思ったより小さい。
自分の顔の中の、口の中の一部を取り出して、こうして外側から眺めるなんて普通はないので、なんだか不思議な感じ。

元の歯の模型と、セラミック矯正後の模型。

ふーーーーん、なかなかいい感じじゃない!?

こんな風に、治療後のシュミレーションができるのは、すごくありがたい。

私:「この前歯4本って、元はアーチが狭くて重なってVの字になってたと思うんですけど、横幅が足りるんですかね?」

先生:「少しづつ歯を小さくしてます。だから入ります。ただ、横幅を小さくしてるんで、縦横のバランスでいうと少し歯が長くなってしまうんですけど。」

私:「元の歯も長かったんで、元と比べて長くなったようにはあまり見えないんですけど、なんでですかね?」

先生:「先端と少し内側に丸めて長く見えないように工夫したりしています。だからすごく長いというようには見えないと思います。このくらいならちょうどいいかな、という感じです。
これより短くするとなると、横の歯3番、4番も削らなきゃならないし、神経も取らないと難しいんですけど」

私:「この4本の歯は神経は取らずに済むんですか?」

先生:「左右1番は神経を取ることになります。これはかなり向きを変えているので、神経を取らないと難しいです。2番に関しては、削ってみて、もしかしたら残せるかなーというところです。」

私:「神経が残せるかどうかは、削ってみないと分からない、と。先生は、だんだんと削っていく途中で、「あ、もう少しで神経に行きそうだな」みたいなのが、見て分かるんですか?」

先生:「はい、分かります。」

私:「1番は向きが大きく変わってるので、神経残すのが難しいのは分かるんですけど、2番はできたら残したいです。」

この模型では、上の歯のみのシュミレーションで、下の歯はいっさいいじっていない状態だった。

私:「この上4本だけやって、下の歯はこのままで噛み合わせなどは大丈夫なんでしょうか。」

先生:「噛み合わせは現状と変えないようにしてるので、この状態だと上の歯だけで済みます。ただ、この下の1番が前へ飛び出てるんで、上の歯とぶつかって、上の歯を早くにダメにしてしまう可能性はあるんですけど、一応、ギリギリぶつからないようにしてるので」

私:「ということは、もし下の歯もセラミック矯正をするのであれば、上の歯も長持ちして、かつ上の歯の形や並びもよくできるということですか?」

先生:「そうです。下との噛み合わせで上の歯の裏のあたりを調整できるので、その方がいいといえばいいです。」

当初は上の前歯だけのつもりではじめた審美歯科めぐりではあったけれど、考えるにつれて、「上下のバランス」を考えるようになっていた。
とはいえ、歯を削るなんて怖い思いはできるだけ少ない方がいいし、治療範囲は少ない方がいい。

私:「じゃぁ、いずれ、たとえば何年か後に下の歯もやるんだったら、今やった方がいいということですよね。できれば、上だけで考えたいです。でもいずれは下もやりたくなるかもしれない。ただ、怖くて、今、下の歯も削る決断はできません。
ちなみに、もし下の歯もセラミックにするとなると、どこからどこまでを変えればいいですか?」

先生:「犬歯から犬歯までの6本です。そしてこの前に飛び出てる1本は抜歯します。で隣の歯とブリッジですね」

(6本も…!)

私:「こわいですね…。抜歯とか…。」

(ガクガク…ブルブル…)

私:「ところで、矯正というのはやっぱり難しいでしょうか?」

先生:「今奥歯の噛み合わせが合っている状態なので、これを崩すのももったいなかな、と。矯正は全体の噛み合わせを変えていくので全顎で考えていきます。あと、やっぱり、時間がかかるので、矯正の最中に歯周病が悪化して抜けてしまう可能性もあります。」

私は、矯正はあまり期待していなかった。
できないこともないけれど、なんとなく、自分でも難しいかな、というか、歯を移動させるなんて、歯周病でグラグラしていた頃の不安が再びよぎるので、考えるのが怖かった。

(矯正は諦めよう)

わたしは、模型の上の歯4本を見ただけで、これで充分な気がしていた。

もっと早くに矯正を考えていれば、もとい歯周病の治療に力を入れていれば、歯周内科という治療法に出会っていれば…と思うけれど、私の歯は、もう根が数ミリも見えている状態だった。

私:「先生、私、虫歯の治療すらしたことなくて、歯を削るというのがどういう感じなのか分からないんですけど、もちろん麻酔をしてるので痛くはないですよね。振動とかはあるんですか?」

先生:「麻酔をしてるから痛みはありません。ただ、ギュイーンという音はします。この音が苦手な方は多くて、歯科恐怖症の方とかは、静脈麻酔も用意してます。点滴で麻酔をしますので、ボーっとぼんやり眠っているような感じで治療ができます。
この麻酔は1時間3万円、+30分追加で1万円です。」

私:「歯医者さんは好きですし、歯科恐怖症ではないかと思うんですけど、やっぱり少し怖いですね。やったことないことなので…」

先生:「静脈麻酔はいつでも追加できますので、やってみて、やっぱり無理!と思ったら追加もできます。一応、2時間前までは食事を控えていただく、とか注意事項がありますので、後で注意書きをお渡ししますね」

わたしは、模型を眺めながら、考えあぐねていた。

前歯4本でこれだけ変わるなんて魅力的。
たとえ歯の寿命を削ってでも、自分で感じる不便さとか心の中の問題が解決できるのならば、わたしはセラミック矯正を選ぶことがそんなに悪いことだとは思わない。

歯チャンネルを眺めていると(←わたしの趣味のひとつ)、セラミック矯正・クイック矯正に対して、あまりにも否定的な意見が多く(多く、というか全員反対している)、こうして悩んでいる気持ちにすら寄り添ってくれる人がこの世にたったのひとりもいない気がして悲しくなる。

歯の健康を思うと、やっぱりセラミック矯正はよくない。
お医者さんが風邪薬を飲まないのと同じで、歯医者さん自身だったら、絶対にやらないと思う。
身内にも絶対に進めないと思う。
(と、そう歯チャンネルでは毎回先生方が書いている)

セラミック矯正をしてもいい人、は、
「芸能人のような「スマイル」で収入が変わる人で、数ヶ月以内にオーディションをひかえていて、それによって数億円の収入が見込まれるのであれば」
だそう。

わたしは、芸能人でもないし、お金持ちでもない。

いまここで、セラミック矯正の費用を捻出できたとしても、今後死ぬまでずっとメンテナンスにお金がかかり続ける。

そんなことは分かっている!

わたしは、歯のために一生働こう。

そう心の中で思っていた。

先生:「一応、下の歯も模型を作ってみましょうか?」

私:「はい、お願いします。やっぱり上下で考えるのが大事だと思うので。」

先生:「分かりました。じゃぁ次回までに作っておきますね。」

私:「上下で考えるのがベストなことは分かりました。でもやっぱり、はじめての治療ですし、怖いので、まずは上をやってみて、それで満足して下もやりたくなったらやる、という風にしたいんです。だから、「下はやらない」という選択肢も残しておきたいです」

先生:「まずは上を仮歯にして様子を見て、それでもし下もやるようだったら、下の歯も仮歯にします。そのときに、上と下の歯のあたりを変えます。だから、今すぐに決めなきゃならないことではないです。」

私:「セラミックの歯を入れる前(仮歯)だったら、いかようにも調整できるということですね。上のみにするか。下もやるか。」

先生:「はい、できます。一応、今この段階(模型でも上の歯4本)での見積もりをお出ししますね。下も一応見積もりを作ります?」

私:「はい、お願いします。」

5分ほど待って、2枚の見積書がやってきた。

■上顎
根の治療 2本 × 50000円
ファイバーコア 2本 × 20000円
審美的仮歯 4本 × 6000円
セラミッククラウン 4本 × 150000円
—————————————
764000円
税込み 825120円

■下顎
根の治療 3本 × 50000円
ファイバーコア 3本 × 20000円
抜歯 15000円
審美的仮歯 6本 × 6000円
セラミッククラウン 6本 × 150000円
—————————————
1161000円
税込み 1253880円

合計 税込み 2079000円

なんと、200万超え!

まさか、歯に200万以上かけるってどうかしてる。
芸能人でもないのに。
若くもないし。
矯正でもないからずっと使えるわけじゃないし。

大人の矯正が高い(100万以上かかる)というのであれば、こっちの方がずっと高い。
倍じゃん!

なにげに、神経を抜いた際の根の治療が高い。
土台(ファイバーコア)を含めると、1本あたり7万円。
私の場合、神経の抜く可能性があるのが、5本(場合によってはもっと)なので、それだけで35万だし。

よくHPなどで見かける料金表には、根の治療の分は含まれていないので、根の治療をする場合(歯の向きを大きく変えたい場合)は、このくらいかかるということなのか。

ともかく、200万、そして神経を抜く、健康な歯を削る罪悪感とともに、大きく私の負担となって心にのしかかったのだった。

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