精神科の可愛い女医さんVSドライな男性医師

以前に、歯の抜ける夢についての雑談を書いた
私は幾晩も歯の抜ける夢を見る。

この日、不眠で通院している精神科のいつもの担当の先生の出勤日にどうしても私の都合が合わず(この先生は週に2回しかこの医院を担当していない)、やむを得ず、この日だけ別の先生の曜日に通院することになった。

症状はいつもと変わらず、順調だし、薬を飲み続けていれば問題ない。

予約の時に、受付の人から「この日は、○○先生という女性の医師になります。」と聞いていた。

この精神科は、私がこれまでに通ってきた医院の中で、一番相性がいいと思う男性の医師が担当だった。
その先生ともかれこれ3年以上の付き合いになる。

でも、たまにはほかの先生でもいいよな〜と思って、私は、その女性医師の診察を受けることにした。

診察室のドアを開けた瞬間、私は、わたしは先生に釘付けになった。

新しいタイプの先生

めっちゃ可愛い!
アイドルみたい!
(たぶん若い)

そして、可愛い声で私に声をかけてくれた。

先生:「○○さん、はじめまして〜♪この時間を担当している○○ですっ!どうぞ宜しくお願いします☆」

めっちゃ明るい!

先生にも、いろんなタイプがあり、それはほんとに、なんとなくの好みというか….、相性で、わたしはこれまでにも女性の精神科の先生に会ったことはあるけど、こんなに明るいタイプの先生には、初めて会った。

先生:「いつもは○○先生の担当でしたよね。いつもお薬の処方は○○と○○ですね。なにか最近変わったことやお悩みはありますか?」

全然、変わったことも悩みもないけど、私はふと前回の「歯の抜ける夢についての考察」を思い出して、先生へ尋ねてみた。

私:「ちょっとどうでもいい話で…、前回も○○先生に尋ねたんですけど、私、歯の抜ける夢を異様に見るんです。」

先生:「えー!私もよくある〜。すごくイヤーな感じですよね!夢占いとか気になって調べちゃって、なんか不吉なことがあるとか、トラブルの予感とか、ネガティブなことが書かれてますよね〜。」

私:「はい、そうなんです。で、○○先生に聞いてみたら、医学的には何の関係もない、ってことで。そうだと思うんですけど、なんとなく聞いてみました。」

先生:「私もよく夢を見るんで、夢占いとかすごく気にしちゃいます!だから、すごーくよく分かりますよ。でも、医学的には関係ないです。」

私:「ですよね。」

先生:「あ、今、歯の治療をされてるんですね。だとしたら、歯のことを考えているうちに眠っちゃって、そのせいで歯の夢を見るのかもしれないですね。」

私:「なるほど。歯の抜ける夢を見るから歯が気になってしまうのではなく、歯が心配だから夢にまで出てくる…という。だとすると、今は治療中なんで、夢に見て当然ですね。」

先生:「早く治療が終わるといいですね!あー、でも私もよく夢みるから、その気持ちは分かるな〜」

….と、始終、私の「歯の抜ける夢の後味の悪さ」に共感してくれた。

たまたまこの先生が、私と同じように、「歯の抜ける夢」を見る体質?なのか、それとも私の不安な気持ちに寄り添ってくれたのか、どちらか分からない。

それにしても、可愛い。
可愛い先生とお話するのは、気持ちが晴れやかになる。
でも。
私はやっぱり、いつもの、ドライな男性の先生の方が、好みだった。

ドライな先生のすきなとこ

このいつものドライな先生が、なぜドライだと感じたのかというと、以前にこんなことがあった。

いつもの診察は、「いつも通りですね」の1分の診療で終わるのだけれど、その日もちょうど「たまには何か話してみるか」という気分になって、私からある話を切り出した。
(そんな気分になって何か話しを切り出したのは3年間の中で前回の夢の話を含め2回しかない)

その頃(いまから数年前)、私は、「身近な人の自殺」という、重い経験をした。
その人は、毎日会っている人で、何かに悩んでいるそぶりは全くなく、明るい人だった。
毎日会う人が自殺したと知り、私は動揺と深い悲しみに包まれた。
ほかの周りのみんなもそうだった。

悲しくて涙が溢れ、「どうしてこんなことになったのだろう」「なにか私に出来ることはなかっただろうか」「もっと相談にのってあげていれば」「なんで毎日会っていて変化に気づかなかったのだろう」という思いが駆け巡った。(思い出しても泣きそうになる…)

鬱病だったのかもしれない。そう思った。
(といっても、通院歴があったとか、そういう症状があっとか、そういう情報は知り得ることが出来なかった。)

もうすでに何も出来ない状況になって初めて、「ああしていれば」ということが溢れてくる。

何週間か落ち込み、「なぜ」の理由は分からないまま、どんよりとした日々が過ぎていった。
わたしはそれからしばらくは、身の回りの人に対して、「この人が自殺したらどうしよう」という不安でいっぱいになってしまった。

「厳しいことを言い過ぎてしまったんじゃないか」「明るく見えて実は我慢してるんじゃないか」「私はちゃんと気づけているだろうか」ということが心配で心配で仕方がなくなってしまった。

それによって、私の不眠が悪くなるとか、日常生活に支障をきたすようなことがあったわけではないけれど、毎日そんなことが心配だった。

そのときの仲間たちは、みんなそうだったと思う。

そんな時、いつもの通院日が来て、いつも通りの診察の中で、「ちょっとプロに意見を聞いてみよう」という気持ちになった。

私:「先生、じつは最近、身近な人が自殺したんです。その人は、毎日会う人で、すごく明るい人で、前日までそんなそぶりもなくて…、やっぱりそういうことがあって私も悲しいし動揺しているし、なにか私にできることがなかったのだろうな…と、思う気持ちでいっぱいなんです。なんでこんなことになっちゃったんだろう…って。考えても考えても答えは分からないんですけど…。」

先生:「うーん、なぜかは分からないですね。」

私:「自殺の原因が…?もしかしたら鬱病だったのかな、とかそういうことも考えちゃうんですけど。」

先生:「そうかもしれないけど、それも分からないです。自殺した人の「なぜ?」なんて分からないですよ。」

私:「そうですよね。でも、直前まで、すごく明るかったんですよ。」

先生:「自殺できる人ってのは、だいたい直前まで明るく振る舞うんじゃないですかね。本当に鬱病が悪い状態で何もやる気がおきなくなると、自殺すらできないかと。」

私:「そうですか…。確かに、「なぜ?」を考えても仕方ないですね。ただ単に、近しい人の自殺、という経験が初めてなんで、動揺してるんです。」

先生:「それぞれに理由はあるけれど、死んでしまったら、理由は聞きようがないですし。
毎年10万人の人が自殺してます。たまたま、それが、○○さんの身の回りで起きた、というだけです。
それが原因で眠れなくなったりするんですか?」

私:「それはありません。薬を飲んでいればちゃんと眠れます。確かにいまはそういうことがあったばかりで落ち込んでいる気持ちはありますが、これも時間が解決するんだろうな、って思ってます。」

そう言って、いつも通り診察が終わった。

私は、先生と話している中で、ちょっとだけ気持ちがスッキリした。
なぜ?の理由は分からない。
それを考えても仕方がない。
そうして、私は、少しづつ復活していった。

あの時私は、私は先生に、どんな回答を期待していたのだろうか。
「その方が自殺したのは、○○さんのせいじゃないですよ。」
「○○さんが気づけなかったのは当然のことですよ。」
って、そんな言葉を期待していたのかもしれない。

先生は、そんな甘い言葉はかけてくれなかった。
極めてドライに、顔色ひとつ変えずに、毎年10万人の人が自殺をしていると言っていた。
その10万人の中の「身の回りのひとのうちのひとり」に私がたまたまなっただけ。

私は、そんな風に、客観的な事実を淡々と伝えてくれるドライなタイプが私は好きだった。

甘い言葉をいくつかけられても、きっと私の心は復活しない。いっときの気持ちよさだけだ。

この件があってから、私はその先生の「ドライな先生」という印象が深まった。
そういう先生が性に合うから、通院を続けている。

精神科の先生にとって、「うつ病」も「自殺」も、めずらしいキーワードではないのかもしれない。
私の体験も、よくある話なのかもしれない。

でも。
やっぱり、ドライな先生は私の話をサラリと聞きながら、ほんの少しだけ動揺していたはずだ。
この日、先生は、はじめて、私の処方箋を間違えて記載した。
これまで一度も処方を変えていないのに。

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