今日は、前回行った細菌検査の結果を踏まえての「お話」の日だった。
「お話」のみの日も、この日で3度となり、正直、早く結論を出さなければならなかった。
一個前の「お話」第十四話:真実が明かされるとき…、見えない歯周病の敵と戦うこと
二個前の「お話」第十二話:点と点が繋がる、真理の追究
(第十三話は「お話」ではなく「治療」)
でも、そう簡単に結論が出せないくらい、私は悩んでいた。
前回に引き続き、わたしの治療は、「セラミック矯正」の枠を超えていた。
あぁ、それくらい、可能性が広がってしまった…
そして、可能性を望んだのは、私自身だった。
この日は、より詳細に奥歯の骨の状態を見るために、部分的なレントゲンからスタートした。
上下左右2カ所ずつ、4番と6番の奥歯の部分的なレントゲン撮影。
この部分的なレントゲンは、私の口に入らないので、いつも先生が手で押さえながら撮影する。
口の中に、器具が入ると、とても気持ちが悪い。
細菌検査の結果
一枚の検査結果の紙があった。
先生:「これが前回の最近検査の結果です。歯周病には、レッドコンプレックスという3つの歯周病に関する菌があり、このPg菌の値が高いので、抗菌療法も効果があるかもしれません。」
検査結果には、P.g菌、T.g菌、A.a菌の検査結果が書いてあった。
先生:「このパーセンテージが5パーセントを超えていると悪い状態だと言えます。」
P.g菌が7.8パーセント。
そのパーセンテージを聞いてもいまいちよく分からない。
そのほかの菌、T.d菌、A.a菌はいなかった。
私が3年前に歯周内科で受けた検査は、この検査ではなく、位相差顕微検査というものだった。
それは、目視で菌の状態を見るもので、その検査では、T.d菌しか見ることができないようだった。
つまり、T.d菌にアプローチする治療を3年前に行い、その効果は充分にあったということだ。(この細菌検査の結果を見ても)
もちろん、検査結果だけでなく、効果があったというのは、「私の口の感覚」がなにより信じられるものだった。
3年前にあった痛みは、今は全くないのだから。
私:「このP.g菌にアプローチする抗菌療法があるということでしょうか。」
先生:「抗菌療法で結果がよくなることもありますし、どちらかというと、歯周外科をしていっきに掃除をした方がいいとも思います。」
私:「それは、薬を飲んで…、つまり血液をめぐって体内から菌を除去する、というものではなく、歯茎の中の汚れ自体を取った方がいいということですか?」
先生:「そうです。歯茎の中をいっきに掃除することで、悪い部分をそのまま除去します。一気に、とうのは、もう盲目下で行えるものではないので、SRPをするとか、そういうことではないです。歯茎を開いて、見える状態で取ります。」
私:「抗菌療法は、何度もしてもいいわけではありませんよね。今回効くかどうかも分かりませんよね。」
先生:「仰る通り、耐性菌が出て来る可能性もありますし、すでに出来ている可能性もあります。」
歯周病に苦しんだ私の10年の思い出…
私:「ところで、以前に、先生は、歯周病のことをサイレントキラーを仰っいましたよね。このサイレントというのが私にはいまいちピンとこなくて、私は3年前に歯周内科の治療をするまで、10年くらい、毎日毎日、歯茎が痛くてたまらなかったんです。全然サイレントじゃなかったんです。そして、今は全く痛くない。私はなぜあんなに歯茎が痛かったんでしょうか?そして、いま痛みもなにもない状況でも、治療をしなければならない歯周病、ということなのでしょうか?」
私は、あの痛かった10年を思い出していた。
痛いのが当たり前になっていた。
先生:「そのときの状態を見ていないので何とも言えないんですけど、おそらく◯◯さんは、きちんと歯磨きをしていたんじゃないんですか?」
私:「はい、私は子どもの頃から歯茎が痛かったので、ずっと歯医者さんに行っていました。そして歯周病の原因はプラークだと言われ続け、歯磨きの指導を何度も何度も受けてきました」
先生:「見たところ、歯磨きが上手なので、ずっと歯磨きを続けてこられたと思うんですよね。そういう方の方が、痛みを感じやすいんんです。歯磨きをしていない人だと、痛みを感じずに抜けます。」
私は、歯磨きだけをひたすら続けてきた10年を思い出し、今、固いものでも何でも食べられるようになっていることに対して、すごくありがたみを感じていた。
だからこそ、今回、削ることに、大きな罪悪感を感じていたのだった。
人工骨を穴に置いてきて、骨が再生する…?!
先ほど撮影した8枚の歯の骨のレントゲンがモニターに映し出される。
先生:「この右上の歯周ポケットが一番深いあたりは、もうこの分岐部分に骨がないので、あぶない状態ですね…」
私は、パノラマレントゲンでも、骨が3分の1になっていることは、3年前の歯周病の治療の時点から知っていたけれど、こうして細かな部分を見ると、改めて、骨の量を実感した。
(※このレントゲンは3年前のもの。たぶんこの3年では大きくは変わっていない。)
私:「そうですね…。この骨の再生って、たしか水平に減っている場合でしか有効ではなかったですよね?」
私は、前回聞いた再生治療の話を思い出しながら尋ねた。
先生:「そうです、◯◯さんの場合、ほとんど水平に骨が吸収されています。ただ、ところどころ、このあたりとか、垂直方向に減っている箇所があるので、やるなら、部分的になら再生治療をする価値はあると思います。
再生治療は1本8万円なんですけど、3本分で2本の料金にするとか…、有効な箇所のみ適用する、という感じですね。」
2本分の料金で3本分の箇所を行うということは、やっぱり「部分的」にしか有効ではないのだな、と私は理解した。
ただ、そのレントゲンを見ても、私には、「どこが垂直に吸収されている」のか、よく分からなかった。
私:「このレントゲンだと私にはよく分からないんですけど、垂直に減っている部分があるんですね?そしてその箇所に再生治療を施すということですね。」
先生:「見にくいんですけど、垂直に減っている箇所があります。あとは、開いてみないと分からないんですけど、開いてみて、へっこんでいる部分に、人工骨を置いていって骨が再生してくれるのを待ちます。」
人工骨が自分の骨とくっついて骨の量が増えて行く…
だから、「垂直方向の骨吸収の場合に有効」なのか、と、私は頭の中でイメージできた。
ここ最近の3回の治療の「お話」は、正直難しくて、なかなか理解ができなかった。
(私が書いていることも、聞き間違い、解釈間違いがあるかもしれない)
部分的には、この再生治療は有効かもしれない。
けれど、やっぱり、水平に骨は減っているように見えた。
私:「分かりました…。切除法だとどうなるんですか?」
先生:「切除法は、でこぼこがなくなるよう、低い部分に合わせて骨を切除していくので、◯◯さんの場合、低い位置に合わせると骨がなくなってしまうので、これは難しいですね。」
私:「そうですよね。」
と、レントゲンを見て、それは明らかだった。
私:「フラップはどうですか?」
先生:「フラップをしても….、そうですね、この7mmの歯周ポケットを5mmに改善する、という目的ならあるかもしれません。
ただ、それよりも浅くするのは難しいと思いますね。もう骨がここまでないので…」
私:「なるほど。5mmでも今よりはいいけど、そもそもの骨の問題を解決した方が将来的にはいいということですね。」
先生:「もう◯◯さんは、すでに抗菌療法とSRPを行っていて、歯茎も引き締まっている状態なので、これ以上の改善が難しいと思うんですよね。歯磨きの磨き残しもないですし… 。」
私:「再生療法をすると、どのくらい歯茎は退縮するのでしょうか?」
先生:「0.7mmです。でも、できるだけ退縮させないようにします。
まず、衛生士のクリーニングは入れません。再生療法をやるなら、歯周ポケットを触って掃除をすると、より退縮しますので。
◯◯さんの場合、すでに、歯周内科と自費のSRPもやって、今コントロールできている状態でこの歯周ポケットの数値なので、もうこれ以上の改善を望むなら、外科に進むしかないと思います。」
私:「順序としては、仮歯にする(奥歯全部削る)→再生治療→被せもの、ということですか?」
先生:「そうです。最終的な被せものにするまでに2年くらいかかります。骨の再生は時間が経たないと結果が出ないので。」
2年か…。まさかの長期に渡る治療!!
受け入れることと治療の順序
私:「ところで、前回のお話だと、仮歯の調整の中で、ここまでやって(模型の通り)改善できな問題が、上下の前突感でしたよね。そこも治すのであれば、仮歯の段階で4番を抜歯して矯正という。」
先生:「そうです。この状態(模型の通り)まですれば、前突感は気にならなくなるとは思うんですけどね。」
私:「先生、単純に、逆の順序だったらダメなんでしょうか?」
先生:「逆…?」
私:「はい、単純に矯正で4番を下げるのを先にして、それでも満足できなかったら被せもの、ってことです。素人考えですけど、もしこの順序が逆だったら、私は精神的に受け入れやすいんです。『まずは削る』という部分の罪悪感が一番大きいので、これがもし矯正だったら、なんとなく罪悪感を感じないんです。なんとなくのイメージなんですけど。」
先生:「矯正ですよね…。それも検討したんですが…。正直この提案をするにあたって、かなり悩みましたし、責任を持たなければならないと思っています。それだけのことをするのですから。ただ、歯周病の矯正はすごく難しいんです。すごくリスクがあって、そのリスクを回避した案がこの案なんですよね。」
先生の言っていることはよく分かった。
モニターには、私の骨の写真が映し出されている。
私にだって、リスクが大きいことは想像でした。
それでも、なんとなく、諦められなかった。
私:「難しいですよね。分かります…。」
先生:「骨の再生がうまくいったとして、インプラントアンカーをたてて動かして…うーん…できないこともないけど、リスクが高すぎて…。前突感は下げられたとして、咬合高径を下げるには、圧下という方法もあるんですけど…、今の歯周ポケットの状態だと、歯周ポケット底の悪い部分も全部奥に押してしまうということになるので…」
見た目の改善ポイントとしては、
・前突感を下げる
・咬合高径を下げる
の2つがあり、この2つを矯正の力で変えるのは難しい(リスクが高い)のだろうと思った。
そのリスクを回避したのが、この28歯フルマウスセラミックなのだった。
そういうことか。
わたしは、だんだんと、これまでの話と、検討して行く中でのプロセスを想像できるようになっていた。
やっぱり、こういう話は、聞いてみないと分からない。
先生はかなり悩んでいた。
もうこれ以上悩ませるわけにはいかないと思った。
私:「分かりました。そうですよね。難しいことはよく分かりました。
でもやっぱり、まだ削るという決心がつかないのですが、再生治療だけをする、ということもできますか?」
先生:「それはできますよ。」
私:「でも削ってからの方がやりやすいんですよね。」
先生:「はい。でも再生治療だけやって、前歯をセラミックにする、って案も、いい妥協案なのかもしれません。」
私は、再生治療の話が出てから、なんだかワクワクする気持ちがあった。
『人工骨を移植して自身の骨を再生する』…ってのが、なんだかすごく興味深かった。
うまくいくか分からない方法でも、そして今現在不便を感じているわけでなくても、なんとなく「やってみたい」という気持ちになっていた。
もしも、先に再生治療のみを選択すれば、その後どうするかは、まだ選択肢を残せる。
・「骨を再生する」ってのは、なんだか「増えている感じ」がして嬉しい。
・「歯を削る」ってのは、なんだか「減っている感じ」がして罪悪感を感じる。
私の「イメージ」は所詮その程度だった。
それでも、再生治療という響きは、前向きに感じた。
なんとなく、その妥協案に落ち着きそうなのかな…と思っていながら、またしても私は時間オーバーで「決定」しないまま、治療時間が過ぎてしまった。
あぁ、「お話」だけで終わるのは何度目だろう…
でも、選択肢は全て聞いたし、私も大分理解できるようになった。
この話は、やっぱり3回くらいしないと分からない。そういうものだと思う。
先生:「次に決めましょうか。次回決めて、お見積もりも出します。」
私:「はい。」
(次までになんとしても決めないと…。もう先生に時間を浪費させるわけにはいかない…。)
私は、その日1時間半の時間を「お話」で終え、次の予約を1週間後に取った。
その日のうちにまさかのセカンドオピニオン
その日の午前に治療を終え、午後は娘の矯正治療の付き添いの予定があった。
娘の矯正は順調に進んでいた。(自分のことでせいいっぱいでこの話を全然書いてない…)
毎月の調整を終た最後、私は唐突に、矯正の先生にこう言っていた。
私:「先生、突然なんですが、セカンドオピニオンというか、検査だけしてもらえませんか?」
私は、1週間後の決断の前に、「まだやっていないこと」を全部やりたい、と思う気持ちがあった。
私がまだやっていないのは、この検査だった。
娘が行ったものと同じ検査をしたかった。
矯正の先生:「え?!どなたのですか?大人のでしょうか。」
私:「はい、私のです。私じつは今歯医者さんで治療中で、で、難しい決断を迫られていて、自分でもどうしたらいいのか分からなくて、少しでも判断の材料が欲しくて、検査をしてもらいたいと思ったんです。治療を前提としない、相談だけできないでしょうか?」
矯正の先生:「お母さんのですか?それは出来ますけど…、検査となるとお金がかかりますが…。」
私:「はい、かかってもいいです。もし先生だったらどうするか…という案をお聞きしたいのです。」
矯正の先生:「矯正を考えているんですか?でもお母さんは歯並びは問題なさそうですよね?」
なんと、矯正の先生は、私の前歯が仮歯だということに気づいていなかった!
私は、前歯を仮歯にしてから、矯正の先生に合うときはマスクを外せなかった。プロが見たら、私が何をしたかすぐに分かってしまうと思い、怖かった。
でも、普通に話をしている時に見える歯だけでは、気づかれなかった。
やっぱりこの仮歯は優秀なんだ!と私は、すごく自信が持て、見慣れた仮歯が愛おしく感じた。
自分では、もう見慣れてしまって、見すぎてしまって、「もっとこうだったら…」「おかしいのではないか」という点ばかりが気になってしまっていたけれど、普通に話をしている時に見える歯の分量では、さほど気にすることではなかったのかもしれない。
(といっても、大きく口を開けたり、笑ったりすれば、プロならすぐに分かると思う。やっぱり気持ち控えめに口を開けて話していたので…)
私:「いえ、今前歯は仮歯の状態で、奥歯の再生治療を考えている段階で、そのフルマウスの治療の過程で矯正をするかもしれなくて、その矯正のタイミングを治療のどこに持ってくるか…ということを相談したいです。」
この話は、正直込み入っていて、一度に説明するのは難しかった。
矯正の先生:「そういうことなら、お金をいただいて、娘さんと同じ検査をできますよ。それで私なりの考えをお話させていただくことはできます。」
私:「ではお願いします。で、急なんですが、1週間後までに決断したいので、それまでの間でお話のお時間をいただけますか?」
今日検査をして、ちょうど6日、検査の結果をお話の時間の予約がとれた。
危機一髪!
その日のうちに、私は、パノラマレントゲン、セファロ、口腔内写真、顔面写真を撮影した。
私は、すべての選択肢を検討したかった。
考え尽くして、これ以上ない、ってくらい考えて、やっと次に進める。
私は、1週間後の「最終決断」まで、出来る限りのことをしたかった。
【セラミック矯正のその日の治療費】
0円
【セラミック矯正のその日のやったこと】
・お話
【セラミック矯正の次回の治療でやること】
決断
久々の歯の写真
もう見た目は全く変わっていないので写真をアップしていなかったので久々に掲載!
矯正の先生が仮歯だと気づかなかった『上の歯:四代目仮歯 / 下の歯:三代目仮歯』のまま。
(以前までの歯の変化写真は第十三話の最下部をどうぞ…)